日本の医師から見たスイスでの妊娠出産(25)~大量出血で緊急コール~
ヘルプの助産師さんが赤ちゃんをすぐに私の胸の上に連れてきてくれました。
明らかに一人目の時より大きい息子。
かわいくてかわいくて。
特に今回は、切れ始めていたとは言え、まだ十分に麻酔が聞いていますので、余裕があります。
主人も立ち会っていましたので、二人で生まれたての赤ちゃんを愛でました。
その間、メインの助産師さんが後産などの処置をしてくれていたと思います。
麻酔が効いているので、何をされているのかはほとんどわかりません。
しばらく処置がすすんだあと、二人の助産師さんがザワザワとあわただしくなりました。
そして、感覚がないなりに(触角は残ります)、産道から出血しているのだなとわかりました。
緊急コールが押されました。
すると間もなく、次から次へとたくさんの医療スタッフが入ってきます。
私は、結構落ち着いていました。
「日曜日の夕方(5時ごろ)なのに、さすがCHUV、こんなにたくさんのスタッフがいるのだなぁ」とのんきに思っていました。
私の胸の上の赤ちゃんは、ヘルプの助産師さんに抱きかかえられ、「赤ちゃんは向こうでパパと一緒に待っていますね」と行ってしまいました。
こんなことがなければもっとずっと一緒に入れたのに…。
最初に来た産婦人科医の男性医師(昼間に挨拶した)が、私の足の間に立っていた助産師さんに代わり、処置を始めています。
べチャッという音が何回もしていますので、やはり出血している模様です。
私は「またか…。」と思いました。
というのも、一人目のお産の時も同じことが起こったからです。
後産の時に、本来であれば、ツルんと出てくるはずの胎盤が、途中でちぎれて全部いっぺんに出てこないで、その破れたところから大量出血したのです。
これは、たまにあるお産の合併症です。
一人目のとき担当していた産婦人科医が(私と同年代でした)、オーベンにすごく怒られていました。
「なんで、ツルんと出せないの!こんなのできて当たり前でしょう!」と。
それとまったく同じことが2人目でも起こるとは思いませんでした。
でも、二回目も起こったということは、私の体質的なところもあるのでしょうね。
そう思うと、一人目のお産の時に怒られていた先生がかわいそうに思いました…。
というようなことを考えていると、別の医師が挨拶をしながら私の頭がわに近づいてきて、おなかにエコーをあてていました。
そして、足がわで処置をしている先生と相談しながら処置は進みました。
そのエコーしている先生が状況を説明をしてくれました。
でもその説明が可笑しくって、
「There are materials in the uterine」(子宮の中に物質がある)
って言うんですよ。
要するに、胎盤の遺残物がある、という意味だったのでしょうが、これだと、何か異物がある!というニュアンスに聞こえますよね。
私は、思わず「materials!?」と聞き返しました。
でも、まあ、胎盤遺残と言う意味だろうなとすぐに理解しました。
「それをすべて取り除くように今、努力していますよ」とも説明されました。
実際に、足がわの先生は、子宮に手を突っ込み、グルんぐるん手をまわして掻き出している様子でした。
(ここが日本での経験と少し違う。日本では、子宮の中から掻き出すのではなく、あくまでおだやかに一部をひっぱって、残った胎盤を引っ張り出していました。もちろん、両者で状況が違ったのかもしれません。今回の方が、より緊迫した状況で、急いで掻き出さなければならなかったのかもしれません)
それでもなかなか出血が止まりません。