小児科医が見たスイスの子育て(1)~母乳スパルタの方針~

無事に(?)出産編が終わりまして、休息する暇もなく育児はやってきます。

 

一人目のときもそうだったように、今回もお産で大量出血した私は、人より、母乳が出てくるのに時間がかかりました。

最初の数日間はほとんど出ない。

それでも、片方20分ずつ赤ちゃんにくわえさせて、なんとか自分のオキシトシンが分泌されるように促しました。

 

それで足りない分はミルクを足せばいい。

これが私の考え方です。

もちろん、母乳をメインにして行こうと思っていましたが、何が何でも母乳でなければ!なんて当然考えていませんし、赤ちゃんにとって必要であれば、ミルクをあげるのがいいのです。

初乳は、ほんの数滴でも必要な成分(IgA)が十分赤ちゃんに移行します。

 

しかし、このCHUV、そう甘くはありませんでした…。

確か、出産前に助産師外来のときに、母乳育児を希望するか、ミルク栄養で行くか、希望を聞かれました。その二択でした!(混合は??)

そのときは、深く考えずに、「母乳をあげたいと思っています」と答えました。

 

それがしっかり記録されており、「あなたは母乳でいくんですよね?ミルクはあげませんよ!」と…。

 

この方針がめちゃ厳しかった。

 

最初の一日程度は大丈夫なんです。

赤ちゃん、ほぼおっぱい飲めてなくても。

 

NICUにも長く勤務していました。

そのときに、よく親御さんに

「赤ちゃんは水筒を持って生まれてくるんですよ」

と説明したものです。

 

最初の24時間程度、ごくわずかな母乳しか飲めなくても、赤ちゃんは大丈夫なんですよ。

脱水を心配しますよね。

でも、赤ちゃんは水筒を持って生まれてきているのです。

十分な水分量があるんですよ。

 

ごたぶんにもれず、我が子も、最初の24時間、おなかが減って泣くということはありませんでした。

 

ただし、それにも限りがある!

ここからが本当に大変だった。

二日目の夜には、私の母乳がほとんど出ないもんだから、おなかが減って泣くわ泣くわ。

同室の隣の赤ちゃんは、本当におとなしくて、夜中にほとんど泣かない。

なのに、我が子は、夜中、かなりの頻度でしかも、めっちゃ大きい声で泣く!!

これが辛かった。

くわえさせてもくわえさせても、我が子を満足させられるだけの母乳は出ないし(だって、貧血なんですから!)、ミルクを足したいと助産師さんに言っても、「あなたは母乳で行くんでしょう?」と一蹴される。。。

それでも、何度も言ったら、ようやく用意しに行ってくれるけど、そこから30-40分かかる…。すでに40分以上くわえさせたあとですので、あかちゃんはずっと泣き止まない、私は疲弊、隣の人に申し訳なくて、部屋を出て歩いてあやす、の繰り返し。

 

これのせいで、ほとんど眠れませんでした。

新生児育児ですから、眠れないのはある程度覚悟の上ですが、自由にミルクをあげられないのは本当に困りものでした。

かといって、日本の助産師さんのようにかいがいしく母乳マッサージをしてくれるわけではありません。

基本放置。

 

日中は夫が来てくれたり、娘を連れて父が来てくれたり、私も気がまぎれるし、赤ちゃんも激しく泣くということはなかったし、あれば、夫が見てくれていました。

でも、夜になると、私と赤ちゃんだけ。それで、また、金切り声をあげて泣くのです。

何度も何度も。

 

心底、個室を予約しなかったことを悔やみました。(Patient hotelに行くと思っていましたので)

 

日本の病院では、ミルクは必要な時に、自分で取りに行くことができましたので、全然ストレスフリーでした。

 

今後母乳メインでやっていきたいなら、出産直後の数日間にいかに赤ちゃんに吸啜してもらうか、ということが非常に重要で、それによって今後の母乳分泌量がかわる、ということはよく承知しております。

 

それでも、私のように、お産の時に出血がひどかったり、普通よりも体力を消耗していたり、ひとによって状況はさまざまです。

それに合わせて母体の状況も見ながら、母乳をすすめるというのが大事なのではないでしょうか。

 

というようなことを現場の助産師さんい言う気にもなれず、あらゆるフラストレーションや疲れがたまった私は、限界を迎えていくのでした。