日本の医師から見たスイスでの妊娠出産(24)~ついに分娩~

私が思うに、(あくまでスイスの場合)、硬膜外麻酔用の麻酔薬には二種類あり、最初にショットで先生が打つもの、とあとで追加で患者が注入するもの。

これらは別の薬だと思うんですね。

先生がショットで打つものがもちろん効き目が強くて、患者が注入するものは安全な、効き目の弱い薬。

 

CHUVの決まりでは、子宮口4㎝開大になって初めて硬膜外麻酔を導入しますので、その後はだいたい10時間以内には出産が完了すると想定されているのだと思います。

 

そういう意味で、ショットの効き目はおそらく10時間程度。それに足りない分を注入役で補う、という感じだと思います。

 

私のように、促進剤を使ってもなおお産の進みが悪い人のことあまり想定してないのだと思います。

なので、麻酔の効き目が切れて、痛みが戻ってしまった。

ですので、麻酔薬の漏れが原因ではなかったと思います。

 

というのも、この二回目の硬膜外麻酔ショットのあと、さらに何時間もかかったのですが、子宮口が全開大になり、いよいよ産まれる!というときに、やはりまた麻酔薬が切れ始めたのです!!

 

一度目のことがありますので、もう一度ショットしてほしい旨を伝えましたが、子宮口全開大後は麻酔の適応はない、とのことで、耐えることに…!!

 

少し戻って、

二回目の硬膜外導入ののち、ふたたび痛みが消えて安堵して、また回旋異常補正のためにベッド上で大きなバランスボールに腹ばいになったりしていました。

 

日勤の助産師さんがかいがいしくお世話してくださる間には分娩に至りませんでした。

促進剤もずっと継続しているのにも関わらず。

でもこれは、まったく前回のお産と同じですから、私は驚きません。

 

準夜帯の助産師さんに引継ぎとなりました。

その助産師さんも英語ペラペラ。

特別に私に英語の話せる助産師さんを割り当ててくださっていたのだなと思います。

 

ところが、引継ぎの終わった直後に助産師さんが内診したところ、突如として子宮口全開大となっており、展退度も100%となっていることがわかりました。

助産師さん、慌てて分娩の準備をしだしました。

私も、慌てて砕石位となりました。

 

このころに麻酔が切れかけて、麻酔のショットをもう一度してほしいことを伝えましたが、前述の通り、ダメと言われました。

でも、もうここからは耐えるしかないと私も腹をくくりました。

なにせ、怒責だけはうまい、と東京の病院の産婦人科医の先生にも褒められた経験がありますから(笑)

 

私もなんとなくもう産まれるんじゃないかと思いました。

それでふんばってしまっていましたが、助産師さんが「まだ分娩の準備が整ってないから、いきんじゃだめですよ!」とストップがかかりました。

 

でも、こちらもそんな余裕はありません。

そして、赤ちゃんがどんどん降りてきているのがわかります。

赤ちゃんが出てくるところを今度こそは見たいと思い(前回お産の時は意識がもうろうとしてそれどころではなかった)、がんばって状態を起こして、下の方を見るようにしました。が、なかなかうまく見えません。

 

そうこうしているうちに助産師さんの準備も整い、いよいよ本格的にいきむことになりました。

そうして、3回目くらいのいきみでどぉうるんと頭が出てくる感触があり、それに続いて体もスルリと出てきました。

 

終わった―――。

 

赤ちゃんもすぐに元気いっぱいの産声を挙げて、本当に心から安堵しました。

 

そんな安堵もつかの間…。