日本の医師から見たスイスでの妊娠出産(23)~地獄の痛み再び~
そして、麻酔導入から8時間ぐらい経過したころ、おなかがキリキリ痛むようになりました。
「麻酔の効きが弱いと思った時はこのボタンを押してくださいね」と言われていました。
自分で麻酔薬を注入することができます。
もちろんリミッターがありますので、単位時間当たり一定量までしか注入できないようになっています。
それを押していましたが、だんだん効かなくなりました。
「痛い・・・。」
体位のせいかなと、いろいろ体位を変えていました。
それまで饒舌にしゃべっていましたので、なかなか助産師さんにも言い出せませんでした。
もう、言わなくては、と思ったころには、ほとんど元の陣痛の痛みが戻ってきていてまったく身動き取れないくらいの痛みなっていました。
助産師さんが急遽麻酔科の先生を呼んでくださいました。
助産師さんも先生も「注入している麻酔薬がなんで効かないのかわからない」という感じでした。
麻酔注入部に貼ったシールに少し液漏れがあったようで、麻酔薬がちゃんと入っていないのかも、ということで、一度チューブを抜いて、入れ直しということになりました。
それで麻酔薬がまた戻るなら、ぜひそうしてほしいと思いました。
そしてチューブを抜いたのですが、今度は腰椎穿刺がうまくいきません!
先生が何度も刺しては、入らない、ということを繰り返しています。
私にも経験があります。
私は自分で言うのもなんですが、腰椎穿刺は得意な方です。
ほとんど失敗しません。
それでも脊椎(骨)に針が当たって、うまく硬膜に刺さらないということはあります。
特に子供は骨がまだ小さいので比較的たやすいです。
大人の方の方が骨にあたって失敗するケースが多いかと思います。
でもまさか、自分の腰椎がそんなに難しいと思っていませんでした。
確かに夜間の麻酔科の穿刺も何度か刺しなおしていました。
にしても、今回は何回刺してもうまくいかない。
側臥位での穿刺をやめて、座位になったりもしました。
それでもうまくいかない!!
これは困った!!
私としては、何回も刺されることは全くと言っていいほど苦ではありません。
何回も失敗すると、先生の方があきらめて「麻酔無しで」と言われるのを、最も恐れていました。
だって、手術の時などとちがい、この腰椎穿刺はマストではないですもん!
麻酔無しでお産する人もたくさんいるのですから!
「お願い、それだけは言わないで。何回刺してもいいから。」
と心の中で祈りました。
すると、最終的にうまく入ったのでした。
本当に安心しました。
そして、ショットの麻酔薬を注入してくださった後、また、痛みがすーっと消え、私の天国が戻ってきました。