日本の医師から見たスイスでの妊娠出産(8)~弾性ストッキングの話前編~
私は、周りの友達に比べて体が特にむくみやすい方ではないと思います。
(女性はわりと、むくみに悩まされる人が多いですよね)
それでも、一人目の妊娠の末期などは、手足がむくんで、結婚指輪が抜けなくて困ったりしたことがありました。
また、手根管症候群になって、朝方手がひどく痺れるというような経験をしました。
そのことをDr Cに伝えてありましたし、Dr Cが私の足のむくみをチェックして、
「弾性ストッキングを処方しますね」と。
このとき、まだ妊娠中期に入ったばかりぐらいですし、自分としてはむくみの自覚は全くありませんでした。
でもDr Cはいつも、早め早めに対策を取ってくれる先生です。
「弾性ストッキングを処方」
日本人からするととても違和感があります。
でも、事前にスイスで出産された方のブログなどを読んで少し知っていたので、ピンときました。
スイスでは、妊婦さんに弾性ストッキングを処方してくれるのです。
弾性ストッキング、日本でも医療現場で使うことがあります。
長時間のオペ後、しばらくベッド上臥床を余儀なくされる患者さんに使います。
しばらく身動き取れないことによって、下半身に血液が滞留して、静脈塞栓症になることを防ぐものです(いわゆるロングフライト症候群)。
時には、フットポンプを併用して、血流をよくすることもあります。
医療用でないものも、日本ではドラッグストアなどで買えます。
私も、愛用していたこともありました。
外科で研修医をしていたころ、15時間以上かかるオペに入ることもよくありました。
15時間以上立ちっぱなしですから、いくらむくみにくい私でも、そういう手術のあとは、足がパンパンになって、痛かったです。
それが、弾性ストッキングをはいていると、全然違うのです!
話がそれましたが、妊婦検診で弾性ストッキングを処方してもらえることになりました。
それが、ただ薬局で買う、というのではなくて、Orthopedic technician (整形外科技師)さんのcabinetに予約して、問診、診察を受け、腰から足の先のすみずみまで計測を受けたうえで、セミオーダーの弾性ストッキングを注文するのです。
日本には全くないシステムです。
まず、整形外科技師という職種がないです。
そして、スイスでは、理学療法士さんのcabinetがある(開業している)のと同じように整形外科技師さんも開業しているのです。
そこで専門的知識を持って、患者さん(お客さん)の困っていること、必要なことにこたえるというシステムになっているのです。
日本人医療者としては大変興味深いシステムでした。
果たしてそのcabinetを受診し、弾性ストッキングをオーダーしました。
細かい計測に加えて、ストッキング(この場合は、お尻まであるタイツタイプ)の色や、材質(光沢のあるタイプか、肌触りの柔らかいタイプか)、つま先が開いているタイプかどうかなど、を希望で選ぶことができました。
私は、これから冬になるというところでしたので、黒の、光沢のあるタイプで、つま先が開いていないタイプを選びました。
1週間ほどで、郵送してくれるということになりました。
その弾性ストッキングのお値段約16,000円也!!
これまでの人生でこんなに高いストッキングを買ったことはありませんでした。
(Orthopedic technicianの診察や問診が含まれていますもんね)
でも、保険カバーだと思い込んでいましたので、楽観していました。