日本の医師から見たスイスでの妊娠出産(4)~スイスの出生前診断前編~

昨今、日本でも新型出生前診断についてクローズアップされることが増え、日本産婦人科学会としてもこの診断をもっと身近に受けられるようにという方向で動いているところですよね。

そして出生前診断には常に倫理的な問題がついてまわり、「命の選別」と「女性の自己決定権」とのはざまでおおきな議論を呼んでいると思います。

 

そのあたりについて、スイスでのお話を書きたいと思います。

 

まず第一に驚いたことは、クリニックにて、全く説明なしに出生前診断のための採血をされました。

スイスでは、先生の診察の前に受付兼・看護師の方が血圧測定、体重測定、採血をしてくださいます。

 

その日(まだ二回目の検診!)も、クリニックにつくと、採尿があり、それが終わると、「採血しますよ」と受付の女性に呼ばれ、採血されました。

一般的な生化学や抗体検査かな、と思い、「これは何のための血液検査ですか」と聞きました。

(私は医師なので興味があり聞きましたが、一般の人だと、特に聞かないかもしれませんよね)

するとその女性が「赤ちゃんのクロモソーム(染色体)をみるんですよ」と言いました。

(正確には、その時の採血は、母体血清マーカーをみるものでしたので、直接的に染色体を見るものではありませんでした)

日本では、新型出生前診断を受けるのには事前に検査についての説明を受け、遺伝カウンセリングを受け、夫婦でしっかり相談したうえで受けるものです。

それなのにこちらでは、他の一般検査と変わらない乗りで、事前の説明も予告も一切なく採血されたことには大変驚きました。

「あとで先生から説明がありますからね」と。

 

そして診察の順番が来て、先生が説明してくださいました。

 

スイスでは、妊婦さん全員に出生前診断をすることになっています。

ただし、もちろん、出生前診断をしたくない場合は、そう意思表示をすることで、しないという選択も可能です。

出生前診断の流れは以下の通り

 

①スクリーニング検査(この日に行った検査)

 ・母体血清マーカー(日本のクアトロテストの項目に似ていますが、少し違いました)

 ・NT(項部浮腫の径)

を測定し、これらに母体年齢を加味して、胎児が染色体異常を持っている確率を統計的に算出します。

 

②新型出生前診断

スクリーニング検査で、染色体異常を持つ確率が、ある一定以上である場合に、新型出生前診断にすすみます。

 

先生より、新型出生前診断に進む人は、3割くらいいるので、もしスクリーニング検査が「陽性」で、新型出生前診断に進むことになったとしても、そんなに慌てないでくださいね、と言われました。

 

そしてこの日、すでに行った採血に加え、NTを計測してもらいました。

NT測定も大変丁寧に時間をかけて測定していました。

NTは約3㎜であったと記憶しております。

 

スクリーニング検査の結果は約1週間ぐらいで、電話でお伝えしますとのことで、その電話を待つことになりました。