日本の医師から見たスイスでの妊娠出産(5)~スイスの出生前診断中編~

 そして、胎児染色体異常検査のスクリーニング検査の結果の電話がかかってきました。

 

「スクリーニング検査の結果が陽性でしたので、新型出生前診断にすすみます。」

 

2人目と言うこともあり、なんとなく楽観視していた私には衝撃でした。

Dr Cクリニックの受付の方は英語が堪能ですが、その方も私も、英語ネイティブではありません。

そのうえ、電話ですので、何度も聞き返しました。

やはり、結果はそうだったようで、新型出生前診断に進むことになりました。

 

新型出生前診断は、クリニックではやっていないので、検査会社に出向いて採血してもらうように指示されました。

日本ではあまりないことだと思いますが、スイスでは、特殊な検査の場合、クリニックで採血を受けるのではなく、検査会社に行って受けるということがあります。

 

新型出生前診断を受けられる期間には限りがあります。

(そしてさらに、その後、妊娠の継続について考えなければならない状況になることも一般的には考えられます。)

ですので、できるだけ早めに受けるように言われました。

 

医療者として、小児科医として、染色体異常のお子さんをたくさん見てきました。

そのご家族ももちろんたくさん見てきました。

ですので、当然知識はしっかりとありますし、誤解を恐れずに言うなら、偏見のようなものも極めて少ない方だと自覚しています。

 

しかし、医療者として物事をとらえることと、母として家族としてとらえることとまったく違う、ということを思い知らされました。

 

電話を切ったあと、自分でも驚くほど狼狽しました。

スクリーニング検査のカットオフがいくらなのか、ということもちゃんと聞かずじまいだったのもあります。

自分のスクリーニング検査の結果が具体的にどういうものであったのか、今の状況がどんなものなのか、わからない状態でした。

 

そして、おそらく、多くの方がされるように、スマホで必死で情報を集めました。

 

検査会社に電話をして、可能な限り至近の日程で予約を入れました。

朝一の予約でしたが、当時の勤め先には連絡して午前休みとしました。

検査(採血、10mlを二本とったと思います。)が終わり、やはり、スクリーニング検査の具体的な結果が気になったので、Dr Cのクリニックに電話して聞いてみることにしました。

 

すると、その時電話に出たのが、フランス語のみの方で、まったくこちらの言いたいことが伝えられなかったので、もうクリニックまで出向くことにしました。

 

クリニックについて、Google翻訳を交えてその受付の方に検査の結果のプリントアウトしたものをくださいと言いました。

すると、たまたま、先生が診察室から出てきて、話を聞いてくれました。

お忙しい中、予約も詰まっていたと思いますが、立ったままではありましたが、お話ししてくださいまして、

「心配になって当然です。ただし、スクリーニング検査の結果、染色体異常を持つ確率が1/1000の方が、新型出生前診断にすすむことになっています。ですので、まだまだ大きな心配をする必要はありませんよ」

 

実際に私の検査結果を見てみると、私の胎児の染色体異常の確率は、約1/350でした。

カットオフよりは3倍ぐらい高いですが、思っていたような数字ではありませんでした。

先生と直接話ができたこともあり、ずいぶんほっとした気持ちでクリニックを後にできました。

 

その日受けた新型出生前診断の結果は1週間後ぐらいとのことで、その結果の電話を待つことになりました。