日本の医師から見たスイスでの妊娠出産(6)~スイスの出生前診断後編~

よくよく調べてみると、その時の私の年齢から算出される、胎児染色体異常の確率が1/400でした。

 

つまり、この数字だけで、新型出生前診断に進むカットオフ値(1/1000)より高いですから、普通に考えれば、私の年齢(30台なかば)で出産する人は基本的に新型出生前診断を受けてくださいね、と言われているような気がしました。

 

もちろん、他の項目(母体血清マーカーおよびNT)の結果との合算で、私の年齢でも、スクリーニング検査の結果が1/1000より小さくなる人もたくさんいると思います。

 

それにしても、スイスでは、新型出生前診断を受けるハードルが低く設定されているということがわかりました。

 

もちろん、スクリーニング検査の結果が「陰性」でも、自費で新型出生前診断を受けることも可能です。

私は「陽性」でしたので、通常の妊婦検診の一環として、保険カバーにより新型~を受けることができました。

 

そして、次に大変重要なこと。

新型出生前診断の次は?

 

Dr Cよりあらかじめ、「新型出生前診断は精度99%以上と高いものです。新型出生前診断の結果が陽性(染色体異常あり)でも、陰性(染色体異常なし)でも、次の検査はありません。」と言われていました。

 

医師として、正確な情報を加えると、

・新型出生前診断の陰性的中率は99.999%

   →つまり、結果が「陰性」であった場合に、染色体異常の子が生まれる確率は0.001%未満

 

・陽性的中率は75%程度

   →結果が「陽性」であった場合に、染色体異常の子が生まれる確率は75%

です。(以上の数字は、母体年齢によりますので、参考までに)

 

つまり、もし検査結果が「陽性」でも、統計的には25%は健常な子供が生まれるのです。

それで、次の検査はない、と言うのもおかしな話だと思いました。

日本だと、羊水検査による確定診断にすすむことになっていると思います。

もちろん、スイスでも、自費で羊水検査を受けられるということなのだと思いますが。

 

検査結果は、数日後に電話がかかってきました。

「検査の結果、問題ありませんでした」

そして、新型出生前診断をすると、染色体をみるので、赤ちゃんの性別もわかるのですが、それを知りたいですか、と聞かれ、知ることを希望しました。

(国によっては、新型出生前診断で性別を教えることを禁止しているところもあります)

 

スクリーニング検査の結果以降、狼狽していた状態がひとまず落ち着きました。

小児科医として、自分でも驚くほど慌てました。

これが母の気持ちなのだなと改めて思いました。

 

 

後日改めて、検査結果のプリントアウトをもらいました。

検査したのは、「13, 18, 21trisomy および ターナー症状群の有無」でした。

それぞれに対して、具体的な数値で確率が書かれていたと思います。

 

このことは、母として、小児科医として、人間として、己の在り方を深く考えさせられる出来事になりました。