謝る人、謝らない人
前述のように、楽しいデザルプでしたが、いっぽうで、信じられないことがありました。
あまり楽しくない記事は書きたくありませんし、私自身思い出すのもいやなことですが、こういった、海外生活の悲しい場面も紹介すべきと思い書くことにしました。
デザルプはお祭りみたいな感じですので、いろいろな露店が出ていて、人もそれなりに多いです。でも、日本のお祭りに見たいにギューギューにはなりません。
そのとき、私と娘(5歳)で手をつないで、露店を見ていました。
近くに歩いていた親子連れがいました。
お父さんが2歳くらいの子供をハイキング用のベビーキャリアに載せて歩いていました。
こちらでは、ハイキング用のしっかりしたベビーキャリアを使っている人をよく見かけます。
金属の骨組みに支えられていて、しっかりした作りです。
地面に置くときは、下部の金属のスタンドを外側に開くと、ベビーキャリアを立てられるようになっています。
おんぶしているときはそのスタンドは内側にしまっておくものです。
そのスタンドがしまわれずに外側に出ていました。
そして不意にそのお父さんが振り向いた瞬間に、娘の側頭部にその金属のスタンドがクリーンヒットしました。
鈍い音がして娘がよろめきました。
そしてぶつかった部分を手で押さえて泣き出しました。
私は驚いて、娘に大丈夫か聞きました。泣いています。痛い?と聞くと、痛い、と泣きながら。
それなのに何も言わずにその男性が立ち去ろうとしたので、思わず声をかけました。
「Hey, いまあなたのそれ(金属のスタンド)が子供にあたったんですが」と英語で。
すると、その男性は振り向いて、肩をすくめるような形で何も言わず。
おそらく、「何言っているのかわからない」(英語で言ったため)もしくは、「たいしたことじゃないでしょ。」と言う感じでした。そしてまた行ってしまいました。
再度娘の様子を確認し、大きなけがをしている様子ではありませんでしたが、まだ痛みで泣いていました。
再度その男性に声をかけ、同じように言いました。
すると、やはりぶつかったことはわかっていたようで、しかも、何がぶつかったのかもわかっていたようで、「これ?(スタンドを指して) ああ、しまっておけってこと?」と言いながらスタンドをしまっていました。そしてまた行ってしまおうとしました。謝罪のことば一切なく!
娘が頭を痛がって泣いている様子も見えていたはずです。そのうえで謝罪の言葉を言うこともなければ、娘の怪我を心配する様子もまったくありません。
これは見逃せないと思い、もう一度詰め寄りました。
男性と、その先にいた奥さんらしき人が、「フランス語でしゃべってくれないとわからないんですけど」というようなことを言っていました。
私はフランス語が得意ではありませんが、基本的なことはわかります。
ですので、向こうが言っていることはなんとなくわかりましたし、これまでに謝罪の言葉がないこともはっきりしていました。
それに、この状況ですから、その男性が、自分のベビーキャリアのスタンドが子供の頭にぶつかって、子供泣いている、それに対してその親が怒っているということは、言葉が100%通じなかったとしても、絶対にわかったはずです。
私はつたないフランス語でも言って詰め寄りました。
それでも奥さんらしきひとは、怒る私を見て、終始薄らわらっていました。
男性の傍らには、その男性の父か義父のような男性もいましたが何も言わず静観するのみでした。
奥さんが「デゾレ(英語でsorry)って言ってほしいんじゃない」と薄ら笑いながら男性に言い、男性が「デゾレって言ってほしいの?」と言って歩きながら行ってしまいました。
私が「これは信じられない、本当にとんでもない」と英語で言うのに対し、男性はぽかんとした表情、奥さんはまだずっと薄らわらっていました。
娘はずっと頭を押さえて泣いていました。
本当に腹立たしいやら、悲しいやら、な出来事です。
こういうことがあると、本当に疎外感を感じますし、差別を受けた気持ちになります。
ただ、スイス在住歴の長い日本人の友人にこの話をすると、そういう人はフランス語で詰め寄ったとして結果は同じ。謝らない人だから。と。
見た目には普通の親子でした。
同年代の子供を持つ親として、どうも思わないのでしょうか。
もし、自分の子供が同じ目にあったら、絶対に悲しいし、怒ると思う。
もしかしたら、金属のスタンドを小さい女の子にぶつけてしまって、まずい、言い逃れなければ、と本能的な自衛に走ったのかもしれません。
日本でももちろん、謝るべき時に謝らない人がいると思います。
でももしかしたら、こちらの国では、より言い逃れようとする傾向があるような気がします。
以上、あまり楽しくない話になってしまいました。
みなさんなら、こういうときどうされるでしょうか。