娘の救急受診したときのはなし(1)
スイスの医療について少し紹介しましたので、今日は娘が実際に怪我で医療受診したときのことを書きます。
娘が3歳10か月のとき、トロッティネットにとてもハマってました。
トロッティネットとは、日本で言うキックスクーター(キックボード?)です。
スイスではトロッティネットに乗っている人がとても多いです。
幼児から大人まで。
通学の通勤の手段として使うのも一般的です。
幼児用のは、前二輪、後ろ二輪の三輪で、安定性が高い作りになっています。
その頃は普段主人が、娘の保育園の送り迎えを車でしていました。
我が家のアパートは地下が駐車場になっており、その地下駐車場内を移動するのに娘はトロッティネットを使っていました。
そしてその日は不注意にも、ヘルメットをかぶっていませんでした。
(やはり幼児がトロッティネットを使う場合はヘルメット必須と思います)
その日大きい子供たちがトロッティネットでスイスイスピードを出しているのを見ていた娘は、自分も、と言う感じで、スピードをビュンビュン出してしまい・・・
そして思いっきり転んでしまったのでした・・・!
口を強く打ち付けたみたいで、主人に抱っこされて家に入ってきたときは、唇が血まみれになっていました。
料理をしていた私は、驚いて事情を聴きました。
そして娘の口元をよく見てみると、上唇の真ん中よりやや右の部分が大きくパックリ切れていました。
その切創はとても深く、上唇の組織が全層切れてさらに内部まで及んでいるように見えました。
そしてその部分からとめどなく血があふれてきます。
そんな状態でしたが、娘は泣くことなく、むしろ驚いて、意気消沈はしていましたが、キョトンとした様子でした。
私は小児科医ですが、こういう外科疾患の時は、道具もないですし、やはり医療機関を受診する必要があります。
女の子ですし、顔の一部に大きな切創を負ったので、きれいにくっつくかどうかということもとても気になりました。
上手に縫合してもらった方が、創部がきれいに治ることも多いです。
とにかく傷が深かったので、やはり医療機関を受診しようと思いました。
もう18時はまわっていましたので、救急にかからなくてはなりません。
私が止血処置をしている間、主人に、近くの小児救急センターに電話をかけてもらい、受診OKの返事をもらいました。
止血処置は主にクーリングをしました。
保冷剤を創部に押し当てていました。
車で救急センターへ向かいました。
もし縫合処置、ということになれば、この年齢(3歳)ですし、全身麻酔かな、そうすると入院かなということが頭をよぎりました。
そういった場合に備えて、子供に予め状況を知らせておくことは重要です(プレパレーション)と言います。
娘に想定されることを伝えました。
小さいながらに、うんうん、とうなずいていました。
救急センターに着くころ、クーリングが功を奏したのか、出血が収まり、創部に血餅がくっついてさきほどのように大きくパックリ開いた状態ではなくなっていました。
また、最初は創部周囲が広範囲に膨れ上がっていましたが、これもクーリングによりやや改善していました。
その状態でまずは問診の看護師さんに状況説明し、見てもらいました。
その後、しばらく待って、医師の診察がありました。
と言っても、診察室に通されることなく、診察エリアの廊下の長いすで診てもらいました(笑)
(日本でも、あまりに込み合っていて急ぐときはそのようなことをすることもあります。ただこの時は、むしろ患者は多くなく、周りにほかの患者がいなかったので、プライバシーもそれなりに守られていました(笑))
そのころにはすっかり出血も止まり、腫れもおさまっていました。
先生(おそらく外科の先生?)は、娘を怖がらせないような優しい言葉をかけながら、舌圧子を用いて口の中や幹部周囲を注意深く観察し、少し触ったりもしていました。
その結果、「傷はもう閉じつつあるので心配ないと思います。できるだけ傷口が閉じるようにしてください。もし再度傷口が開いて出血がひどい場合はもう一度受診して下さい」というようなことをおっしゃいました。
娘は、安心のために持ってきた大事なくまモンのぬいぐるみを抱いて、頑張って診察を受け、その間泣くことはありませんでした。
私から見ても状態は落ち着いていましたので、ひとまず安心して家に帰りました。
(つづく)